【トピック】「究極ゲーム攻略全書VOL.8」レビュー
ポケモンカードの非公式攻略本が登場!
思いの外インパクトが大きかったので、レビューを書いてみます。
いやーまじでやべーよこれは。
今回読んだ本はこちら。
「究極ゲーム攻略全書VOL.8」。
※以降「VOL.8」と略します。
このレビューとそれを書いている人物
なにものかと申します。
ポケモンカードはファン歴23年目、ポケモンカード書籍コレクターでもあります。
職業は編集者で勤続12年目。
そんな僕がとにかく書きたいことを書く、この記事はそういう記事です。
読みやすさをかなり割り切っていますが、ご了承ください。
レビュー以外のこともめっちゃ書きました。
究極ゲーム攻略全書「VOL.8」について
様々なゲームの攻略情報を取り扱う非公式攻略本、「究極ゲーム攻略全書」シリーズの8号目です。
編集者は「カゲキヨ」氏、出版社は「スタンダーズ株式会社」。
協力者として情報サイト「ポケアド」管理人の「寺師カズキ」氏と「永井ヨシヤス」氏がクレジットされています。
※いずれも後述します。
今号の特集は「ポケモンカード」「シャドウバース」「マインクラフト」の3章構成。
全176ページ中のほぼ全部となる6~166ページがポケモンカード、残る167~171ページがシャドウバース、172~175ページがマインクラフトという偏った構成です。
ポケモンカードについては、基本的なルールから公式大会優勝デッキまで非常に幅広い情報が掲載されています。
非公式攻略本ならではの危うい情報が多数掲載されているのも特徴的。
全体的に広く浅い内容なので、ある程度しっかりポケモンカードに取り組んでいる人にとっては役に立たない可能性が大きいです。
さながら「書籍版まとめサイト」といった印象です。
※詳細な内容については後述します。
ただし、自力でこの本と同等の情報を収集するには相当な労力が必要になるので、全く何もわからない人にとっては情報量としてそれなりの価値があるはず。
また、情報源としてはさておき、広く浅い内容が1冊の紙の本にまとまっているということの意義は限りなく大きいです。
例えば、明日から一切インターネットが使えませんと言われたらこの本の地位は文句なくTier1です。
あるいは、ポケカに詳しい人が周りにいない上にインターネットを自由に使わせてもらえない子供、等にとってはバイブルになり得るでしょう。
親切にも、この本の漢字には全てふりがながついています。
もし、この本の1200円という価格が高いと思ったら、その人はこの本の対象読者ではありません。
この本の対象読者は、1200円でこの本を買いたいくらい情報に飢えているはずです。
余談ですが、正直に、正直に申し上げますと、この本で使われている日本語は大変あやしいです。
あやしさのバリエーションが非常に豊富で、このあやしさの数々を端的に表現する方法が思いつきません。
また、誤脱字や表記揺れ等の基本的な間違いは随所に散りばめられています。
編集者としては蕁麻疹が出そうになるのですが、そういう細かいことを気にする人種もやはりこの本の対象読者ではないのだと思います。
そもそもの究極ゲーム攻略全書について
ゲームの攻略をテーマとしたシリーズものの書籍です。
「カゲキヨ」氏を中心に、スプラトゥーンやスマブラ等のテーマ毎に様々なゲストが協力者として参加しています。
基本的に、特集対象の権利元に許可を求めない非公式攻略本として制作されています。
そのため、キャラクターのイラストやゲームのプレイ画面等はオリジナルのイラストや図で代用し、著作権法を巧みに回避しようとしています。
ゲームの攻略本以外でもディズニーランドの非公式ガイドブック等に見られる手法です。
「VOL.1」に相当する「究極ゲーム攻略全書」は2017/8/12発行。
ちなみにこちらはSplatoon2特集が掲載されていました。
今回ご紹介する、ポケモンカード特集が掲載されているものがVOL.8。
「VOL.6」以前のものはAmazonのウェブサイトで一部試し読みができますので、気になる方は調べてみてください。
毎号テーマが異なりますが、ボリュームやクオリティ等はいずれもかなり近い印象で、大いに参考になるかと思います。
出版元のスタンダーズ株式会社について
東京都にオフィスを構える出版社です。
ジャンルとしてはIT系を中心とした解説書が多いようです。
ホームページのトップに「弊社書籍のネット販売の案内はAmazonで行っております。あらかじめご了承ください」という不思議な文言が掲載されています。
一体何をご了承すればよいのかよくわからないけど、好きです。
編集のカゲキヨ氏について
本名「岡嶋佑介」。
1980年生まれ。
日本大学芸術学部卒。
株式会社晋遊舎退社後、ライター・スマホアプリ評論家として活動。
ブログ(The Last Supper)は更新が止まっていますが、2014年時点でレビュー総数2000以上とのことで、ベテランと呼んで差し支えない実績をお持ちです。
仕事の比率として「純粋なライティングの仕事はあまり多くない」とのこと。
いくつか無料の記事を拝見しましたが、文語ベースに口語的表現を織り交ぜた独特の文体を使われています。
今回紹介する「VOL.8」では「構成・編集」でクレジットされており、文体も前述のような特徴が見られるため、この方が少なからずライティング面を主導していると見てよいかと思っています。
ポケアドとは
ポケアド〜ポケカ初心者も楽しめる総合情報サイト〜 デッキレシピやポケモンGXの特集、カードやデッキ解説など
ポケモンカードを専門的に扱う総合情報・通販サイトです。
開設は2017年1月1日、共同運営されている総合情報サイトとしてはポケカメモに次ぐ活動歴です。
運営チームとしてはデッキレシピのキュレーション、ライターとの提携、プレイヤーへのスポンサー制度等、前衛的な取り組みを他に先駆けて打ち出し、第2次ポケカブーム前の最も野心的な価値あるウェブサイトの一つでした。
※通販についてはここでは言及したくないです。
初心者から中級者へのステップアップを促す運営コンセプトは究極ゲーム攻略全書のそれに近く、管理人のお2人が今回のポケモンカード特集の協力者として抜擢されたのも合点がいきます。
彼らがスプラトゥーン2特集の際のyugo1氏他数名、スマブラ特集の際のサウザー氏等と同じポジションということです。
究極ゲーム攻略全書VOL.8の感想
個別の記載について、気になる部分をピックアップして雑に言及します。
表紙
コロコロコミックのような派手なフォントがぎっしり詰め込まれた表紙です。
「ポケモンカードゲーム」は「ポケモン・カード・ゲーム」とナカグロで区切られています。
主人公風の謎の少年、ポケモンカード風の謎のカード、エネルギーシンボル風の謎のシンボル、ポケアドのお2人のイラスト等が彩りを添えています。
表紙の段階でかなりの圧を感じます。
中表紙
「本書を購入する前に必ずお読みください」「本書はメーカー公式の書籍ではありません」「必ず自己責任のうえでご利用ください」等の物々しい注意書きが並びます。
相手の初手がぶん回っているときくらいの恐怖を感じる強烈な中表紙です。
目次
目次に掲載されているタイトルと本文側のタイトルが何故か一致していません。
第1章「ポケモンカードゲームをはじめよう!」
第1節「ポケモンカードゲームってどんなゲーム?」から第9節「ポケモンチェックで状態異常を判定する」までが基本的な遊び方の説明です。
公式の「遊びかた説明書」とほとんど同じことが独特の文体で改めて記述されています。
権利上の制約で本家の画像を使えないこともあり、この範囲のクオリティは明確に「遊びかた説明書」以下です。
他の情報と併せてこの一冊にまとまっている、という点に唯一のメリットがあると言えます。
構成に関して、第4項「ポケモンカードゲームのルールを知ろう!」の前に第3項「デッキの組み方を知ろう」が来ていて、要するに説明の順序が逆になっているという問題が。
「遊びかた説明書」ではもちろんデッキの組み方の方が後に来ています。
というか、この書籍全体として、説明の順番をあまり気にしていない様子で、新しい概念がなんのフォローもなくしれっと登場することが結構多いです。
個人的には、20ページ第10節第2項「ポケモンGX(ジーエックス)」のポケモンGXのデメリットに関する記述が非常に印象深いです。
その1
反面、デメリットとして、ポケモンGXが『きぜつ』すると、サイドを2枚とられてしまうというデメリットがある。
その2
ポケモンGXのメリット・デメリット
(中略)
・サイドを2枚取られてしまう
その3
ポケモンGXがきぜつするとサイドを2枚取られてしまうデメリットがある。
これがなんと3回とも同じページの中に書かれています。
同じことを立て続けに3回も説明しているのです。
つまり、同じことがほとんど連続して3回書いてあるということになります。
相手が嫌がることを繰り返すのは対戦の基本なので、つまりそういうことなんだと思います。
多分。
第11節「サプライやグッズを揃えよう」では、おやつスリーブやKMCハイパーマットシリーズなどの他社製品の紹介、第13章「カードは1枚単位でも購入できる!」ではカードラッシュや遊々亭等の通販サイトの紹介、「メルカリ」「ヤフオク」を通じた個人取引の紹介等、公式メディアでは絶対に触れられない情報の数々が不安になるくらい大量に盛り込まれています。
第15節「覚えておきたい!ポケモンカード用語集」では、様々なカードゲーム用語がポケモンカード用語として説明されている他、「タップ」「サレンダー」「ナーフ」等ポケモンカードに持ち込むべきでない可能性が高いものも紹介されています。
折角の用語集なのですが、書籍全体で表記がガタガタに揺れていてイマイチ頼りにならなかったりします。
例えば「ピン挿し」が、他のページでは「ピン差し」「一枚差し」等になっていたり。
ちなみに、間違って同じ項目が2回掲載されているものがありますので、実物を購入した方は探してみては。
章末「プレイヤーに訊け!!」ではポケアドのお2人へのインタビューが4ページに渡って掲載されています。
ポケアドとしての活動の紹介の他は比較的広く浅い内容ですが、この時代のプレイヤーの活動を示すものとして後々貴重な歴史的資料になりそうです。
それよりも何よりも、衝撃的な内容が1件。編集サイドからの補足としてなんとプロキシの作り方が紹介されています。
違法性はないにせよ、印刷物を作る立場から「コピーで済ませましょう」という趣旨のことが言えるのは、すごい。
語彙を失うくらい、すごい。
いいのか。
第2章「最強デッキ集」
JCSマスター優勝のレシリザ、同シニア優勝のルガゾロ、はたまたNAIC優勝のジュゴゾロ等、幅広いデッキが全部で20点も紹介されています。
デッキ1点につき、キーカードや立ち回り等の解説に1ページ、カードリストに1ページ、合計2ページを使う贅沢仕様です。
有力なデッキレシピに自力で辿り着けない層にとっては大変便利な資料のはず。
デッキ名が左ページ左上に固定されていて、パラパラとめくって読むのにも便利。
出典や実績を残したプレイヤー等の情報はありませんが、読者には不要と判断してのことでしょう。
全く問題がないわけではありませんが、少なくとも法的には問題ないかと思います。
そんな数々のデッキレシピの後、第1節「立ち回りについてのポイントを知ろう」には、あらゆるデッキに役立つ考え方がまとめられています。
1つの例を、本文78ページから引用します。
いくら強いデッキを知っても、ただ闇雲にプレイするだけでは強くはなれない。
その通り。
手札をドローできるカードを使っていくことはアドバンテージを取ることにつながるぞ。
その通り。
でもちょっと待って。
ドローできるのは手札じゃないです。
山札です。
第3章「お役立ちカード情報」
便利なカードリストであって、独自の情報はありません。
Amazonの商品紹介ページで「コピーしてプロキシカードとしても使える!」と書かれていることで、物議を醸しているこのコーナー。
ラインナップのカテゴリは「GX」「汎用トレーナーズ」「最新弾(=リミックスバウト)」と、プロキシ需要の高そうな3つ。
結論から言うと、このページでプロキシを作ることは可能です。
1ページが中央で4分割(汎用トレーナーズは6分割)され、それぞれにカードのテキスト情報が流し込まれており、拡大率100%で印刷してカットすればスリーブに収まるサイズのプロキシが出来上がるという寸法です。
しかし、そのためにはまずこの本を1ページずつコピーしなくてはならないので、プロキシのベースとしての利用価値は限りなく低いと感じます。
コピー機は使えるけどインターネットに接続できないとか、画像を適切なサイズで印刷する方法を何も思いつかないとか、そういう特殊な事情のある人なら利用価値はあるかもしれません。
それ以外の人にとってはただのパラパラめくって見るのに便利なカードリストです。
総括
こういった解説書は、ポケモンカード発売当初、年代でいうと90年代後半には多数出版されていました。
しかしその後、ポケモンカード市場の縮小や主要メディアのオンライン化等の様々な要因によって姿を消していったのです。
この「究極ゲーム攻略全書VOL.8」は、その時代の書籍の数々やその時代を生きていた幼い頃の自分達を思いださせる一冊でした。
情報源としては、今の自分には必要ないかもしれません。
しかし、これを必要としている人もきっとどこかにいるんです。
でも、そういう人達に届く情報がこれでいいのか。
もっといい情報を伝える方法はないのか。
色々と考えさせられました。
考えただけだけど。
最後にAmazonのリンクとか貼ったら多少小銭が入るかと思ったんですが、なんか癪なのでやめます。
読みたい人は各々買ってください。
そしてこの本の正しい感想を各々模索してください。