【コラム】僕が転校した世界ではポケモンカードのルールが異次元だった件
ポケモンカードが発売された当時、何もわからない子供たちは独自の解釈で自由にポケモンカードを楽しんでいた。
今回はそういった実例の報告を兼ねた懐かし語りです。
ラノベ風のタイトルにしてみました。
さて。
「ポケットモンスターカードゲーム」の第1弾が発売されたのは、1996年10月20日。
僕は小学校5年生でした。
遊びかたを覚えるための手がかりは、文字だらけの小さな「遊びかた説明書」が1冊だけ。
見るだけで遊びかたがわかる動画、なんていう親切なものはありません。
田舎なのでティーチングイベントもありません。
周りの子供たちも全員同じ状況です。
大人だって同じ。
誰も遊びかたを教えてくれません。
僕は自力で遊びかた説明書を読み解き、弟と2人で細々と対戦を楽しんでいました。
そしてある日、僕に転校の機会がやってきました。
当時小学校6年生。
そちらでのクラスメイトは、既にポケモンカードを持っている子もちらほら。
しかし、そこで休み時間に繰り広げられていたのは、想像もしていなかった自由すぎる対戦でした。
ポケモンカードの遊びかた(僕の転校先バージョン)
ルール
僕が転校先で見たポケモンカードの遊びかたは、極めてシンプルなものでした。
明文化されてはいませんでしたが、記憶にある限りをここに書き起こしてみます。
1.自分のコレクションからポケモンのカードを6枚選び、手札にする。
※同じポケモンは1枚までとする。
2.手札からポケモンのカードを1枚選び、ワザの名前を宣言しながら表にする。これを相手と同時に行う。
※ワザを使うために必要なエネルギー等の条件は無視する。
3.お互いのワザのダメージを計算し、きぜつの判定を行う。
※ダメージの計算に関係ないテキスト、ポケモン以外のものを参照するテキストは無視する。
4.ラウンド単位での勝敗の判定を行う。
※どちらか片方がきぜつした場合、きぜつしなかったポケモンの勝利。
※両方がきぜつした場合、引き分け。
※両方がきぜつしなかった場合、引き分け。
5.2~4を6回繰り返し、ゲーム単位での勝敗の判定を行う。
※各ラウンドの勝利数の多い方が勝利。
遊びかたの例
実際にどんな形で対戦が進められていたのか。
所謂一人回しの形で例をお見せします。
対戦準備
自分のコレクションから6枚を選びます。
書いてある数字がなるべく大きいものがいいです(小学生なので)。
ゲームボーイ版「ポケットモンスター赤・緑」(以降「GB版」)の手持ちポケモンのイメージですね。
今回の手持ちは上の写真の6枚。
相手も同じように6枚を選んだら、バトルスタートです。
第1ラウンド
ワザの名前を宣言しながら、カードを表にします。
「せーの!ソーラービーム!」
「せーの!ちょうねんりき!」
初戦はくさタイプ最強のフシギバナと、エスパータイプ最強のユンゲラーの対決です。
お互いのワザのダメージとHPを比べます。
ポケモンカードにはGB版と違ってすばやさのパラメータがないため、計算は同時に行います。
フシギバナのHP100に対してちょうねんりきのダメージは50。
ユンゲラーのHP60に対してソーラービームのダメージは60。
ユンゲラーがひんし(きぜつではない)、フシギバナの勝利となります。
まずは1勝、1歩リードです。
ちなみに、特殊能力「エナジートランス」やワザ「じこさいせい」は存在自体を無視します。
この遊びかたではエネルギーを使用しないため。
というか、誰もエネルギーの意味がわかっていないため。
第2ラウンド
「せーの!だいもんじ!」
繰り出したのはほのおタイプ中堅のキュウコン。
「せーの!りゅうのいかり!」
もうフシギバナは出てこないと見たか、相手のポケモンはみずタイプ最強のギャラドスです。
弱点は普通に計算します。
カードには何も書かれていませんが、GB版と同じように2倍として計算していたのです。
キュウコンのHP80に対して、りゅうのいかりは弱点で100ダメージ。
これで勝ち数は1対1。
ちなみに、この遊びかたではエネルギーシンボルだけではなくエネルギーをトラッシュする・させる効果も無視します。
そのため、多くの炎ポケモンは通常のルール以上に強力です。
ということで、そこに対して弱点を突ける水ポケモンもよく使われるのです。
また、特殊状態に関する効果は無視します。
今回の場合、ギャラドスの「バブルこうせん」は単に40ダメージを与えるワザとして扱います。
誰も特殊状態を理解していないため。
第3ラウンド
「せーの!ちきゅうなげ!」
既にユンゲラーが出たので、かくとうタイプ最強のカイリキーをここで繰り出します。
「せーの!とっしん!」
相手はほのおタイプ中堅のウインディです。
特殊能力や追加のテキストについては、ダメージに関するものは通常通り計算します。
この場合、カイリキーのHP100に対してとっしんのダメージは100。
ウインディのHP100に対してちきゅうなげのダメージが60、とっしんのダメージが30、はんげきが10で合計100。
ウインディがひんし、カイリキーの勝利です。
これで再びリード。
第4ラウンド
「せーの!ゴットバード!」
ここでコイン判定の大技を持つファイヤーを繰り出します。
「せーの!うずしお!」
相手はほのおタイプの弱点を狙ったニョロボンです。
コイン判定は通常通り計算します。
通例、わざわざコインを使わずにじゃんけんで決めます。
しかし、ニョロボンのHP90に対して、ゴットバードは最大80ダメージ。
ファイヤーのHP80に対してうずしおは40ダメージ。
どちらもひんしにならず、この場合は引き分けです。
ほのおタイプの中でも、弱点のないファイヤーは人気のポケモンです。
ワザはコイントスですが、そもそもファイヤーを一撃で倒せないポケモンと多く、2回に1回は勝てるイメージです。
第5ラウンド
「せーの!じばく!」
既に勝ち数で有利なため、ここは引き分け狙いのゴローニャです。
「せーの!ヨガのポーズ!」
相手はバリヤード、こちらも引き分け狙いのカードです。
この場合、ゴローニャのHP80に対してヨガのポーズが10ダメージ、じばくが100ダメージ。
バリヤードのHP40に対して、じばくの100ダメージが特殊能力なぞのかべで軽減されて0に。
じばくができるレアコイルやゴローニャは、大体のポケモンと引き分けることができるため比較的使用率の高いポケモンです。
しかし、バリヤードは全てのポケモンと引き分けることができる上に、相手が引き分けを狙ってきた場合は一方的に相手をきぜつさせることができてしまうのです。
第6ラウンド
「せーの!10まんボルト!」
最後はでんきタイプ最強のサンダーです。
「せーの!ほのおのうず!」
相手もほのおタイプ最強のリザードン、最後は最強対決です。
サンダーのHP90に対して、ほのおのうずが100ダメージ。
リザードンのHP120に対して、10まんボルトが100ダメージ。
サンダーがひんし、リザードンの勝利となります。
ほとんど全てのポケモンを倒せるリザードンは、このルールでは無敵のカードです。
ダメージを無効にできる一部のポケモンと、弱点を突いて一撃で倒せるポケモンだけが引き分けに持ち込むことができますが、そんなことは滅多に起きません。
数字がでかい方が勝つ。
ポケモンカードはそういうゲームなんです。
そういうゲームだったんです。
対戦結果
2対3で相手の勝ちです。
接戦でした。
まとめ
当時僕が目撃したのは、まさにこういった対戦でした。
最初は呆気に取られましたが、こうやって振り返ってみると当時のクラスメイト達の想像力の逞しさに驚かされるような気がします。
そもそもの話、拡張パックしか買ってもらっていなくてエネルギーカードや遊びかた説明書を持っておらず、こうして遊ぶ他なかったという事情もありそうです。
真面目に突き詰めると、つまらないゲームかもしれません。
でも、当時の子供たちにとってはこれで十分楽しかったんです。
きちんとルールに従った対戦。
独自のルールでの対戦。
ポケモンカードを使ったポケモントレーナーごっこ、という楽しさの本質は同じところにあるのかもしれません。
こういう遊びかたも、一度試してみてはいかがでしょうか。
意外とおもしろいかもしれませんよ。
はははっ(大山功一風の笑い)。