【コラム】コロッケサンドとマグカルゴ
Pokémon fit第4弾から、マグカルゴのぬいぐるみを買いました。
「どうしてマグカルゴ?」と思う人もきっといるでしょう。
マグカルゴの話をします。
ところで、僕は子供の頃からずっとポケモンカードが大好きでした。
中学生になっても、高校生になっても、大学生になってもポケモンカードで遊んでいました。
大学生の頃の僕は、奨学金を借りている程度のそこそこの貧乏学生でした。
毎日お昼になると、売店で150円のコロッケサンドを買って食べていました。
今日も明日も、コロッケサンド。
お腹が減っても、帰るまでしばらく我慢。
コロッケサンドは僕の貧乏暮らしの味方でした。
そんな暮らしをしていたので、趣味のポケモンカードでも貧乏プレイヤーに甘んじていました。
コロッケサンドで節約したお金で、最低限のポケモンカードが買える。
足りないカードは知恵と工夫でカバー。
しかし、ある日のこと。
僕の慎ましやかなポケモンカードライフを脅かす悪魔がマッハ2で飛来します。
ヤツの名は≪ピジョット(PCG1)≫。
2004年4月9日発売の「伝説の飛翔」で登場し、ゲーム環境を一変させました。
そのポケパワー「マッハサーチ」の「自分の番に1回」「好きなカードを」「手札に加える」という破格のサーチ性能で圧倒的な展開を実現するこのカード。
ピジョットを早く立てたプレイヤーがその圧倒的な展開力でもってゲームを制する、「鳩ゲー」とも呼ばれるゲーム環境が生まれたのです。
そのピジョットを使う上で最大の難敵が、進化元であるこの≪ポッポ(PCG1)≫。
2004年3月19日発売の「ランダム構築スターター『リザードン★炎』」という商品にのみ収録されていたカードです。
その名の通り、定価900円の構築済みスターターでありながら中身はランダム。
ポッポはそこに2分の1の確率でしか封入されておらず、実質的なトップレアカードでした。
そこらじゅうの草むらで見かけたはずの、あのポッポが。
デッキに必要なポッポは2枚。
これが空にも届くほどの高いハードルでした。
ポッポを自力で引き当てるには、ランダム構築スターターを剥きまくるしかありません。
900円のランダム構築スターター1箱は、僕にとっては150円のコロッケサンド6食分です。
誰もがピジョットを使うためにポッポを欲しがるような状況です。
誰に尋ねても、ポッポを譲ってくれる人なんていません。
カードショップ(当時はポケカの取り扱いは希少でした)を巡ってみても、どこのショーケースにも並んでいません。
相場は1枚5000円。
2枚で10000円は、僕にとっては実にコロッケサンド約66食分になります。
僕は「ピジョットには手を出さない」という判断をし、ポッポ難民として生きる道を選びました。
いつ使い物にならなくなるかわからないカードに大金を支払うのは、あまりにもリスキー。
ていうかそもそも手に入らない。
何か、何か策を見つけなくては。
そんな僕に向けて救いの光を灯したのが、≪マグカルゴ(PCG2)≫。
2004年7月1日発売の拡張パック「蒼空の激突」に収録されており、ほとんどピジョットの直後に登場した形です。
ポケパワー「じならし」を持ち、「自分の番に1回」「好きなカードを」「山札の上に」という、「ちょっと惜しい1進化のピジョット」とでも言うべき性能をしています。
ちなみに、2018年5月3日発売の「チャンピオンズロード」にもほとんど再録に近い形で収録されていたので、ピンと来る人も多いでしょう。
「ふわふわのくま」で知られる原田みどり先生のイラストの、やさしそうなマグカルゴ。
マグカルゴの進化元として僕が使っていたのが、この≪マグマッグ(PCG2)≫。
2004年7月1日の構築済みスターター「レックウザデッキ」に収録されていたものです。
こちらも定価900円ですが、中身は固定。
ありがたや。
僕はマグカルゴを使いこなす方法を考え続けました。
ピジョットの代わりとしてマグカルゴを使っていたのでは、ピジョットを使っているプレイヤーに勝てない。
ピジョットではなくマグカルゴの方がいい、というデッキを作らなくては。
生きろ、ポッポ難民。
ちなみに、≪ルンパッパ(PCG2)≫を主軸とする通称「ルンカル」は、マグカルゴを活用したデッキとして当時有名でした。
ルンカルにも随分お世話になったもんです。
やがて、そんな僕の苦労がついに報われる日が来ます。
2005年3月27日の「バトルロード スプリング★2005」関西B大会。
その時僕が使っていたデッキは、「わるいハガネール・ミロカロス」。
ポケモンを1進化で固めるべく、サポートにはマグカルゴを起用しています。
大会は、激戦に次ぐ激戦でした。
あの憎きピジョットのデッキとの戦いも、幾度となく潜り抜けました。
最終的な成績は、マスターリーグ2位。
高額なポッポも、ポケモンexも使わない貧乏デッキでの戦果。
そこにマグカルゴの大きな貢献があったことは、言うまでもありません。
あれから約15年経った今日、ハガネールと、ミロカロスと、マグカルゴのぬいぐるみを買ってきて、入賞盾の横に飾りました。
あのときはありがとう、そんな気持ちを込めて。
※勝利のリングはレプリカです。
コロッケサンドと同じように、マグカルゴもまた僕の貧乏暮らしの味方でした。
あの気の抜けた顔を見ると、コロッケサンドで食費を節約しながらポケモンカードに興じていた頃の記憶が綯い交ぜに思い出されます。
しっとりとしたコロッケの歯ごたえと共に伝わる、じんわり甘辛くどこか切ないソースの味。
じならしで山札の上に戻したカードがすぐに手札に加えられないもどかしさ。
サンドイッチの食パンの端っこを食べきったときの味気無さ。
相手のピジョットのマッハサーチの展開に引き離されていく歯痒さ。
あの頃の僕は、よくがんばっていたなあ。
ありがとう、マグカルゴ。
そして、ポッポをトップレアカードにした「ランダム構築スターター『リザードン★炎』」を考え出した人。
一生許さない。