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【コラム】ポケモンカードにとってのDiarynoteとは一体何だったのか

Diarynoteは、ともだちてちょうだった。

 

かつて、「Diarynoteの時代」がありました。

Diarynoteはアクティブなポケモンカードプレイヤー達にとって必須のツールでした。

「DNやってますか?」などというという言葉が、挨拶のように交わされていたりもしました。

今やそのDiarynoteも徐々に機能を停止しつつあり、既にTwitterやnoteに立場を譲っています。

 

Diarynoteとは何だったのか。

Diarynoteの前と後で何が変わったのか。

ひとつの時代が終わりを迎える今、ポケモンカードコミュニティにとってのDiarynoteを見つめなおしてみようと思います。

とか言って、昔話がしたいだけです。

ポケモンカード老人は昔話が好き。

Diarynoteとは

Diarynoteは、レンタルウェブ日記サービスのひとつです。

一般的にはブログサービスとして認識されており、実際その通りだとは思います。

しかし、経緯としてはどちらかと言えばブログブームより前のウェブ日記ブームの中で生まれたものであります。

公式サイトでは「ブログ」という言葉を使わず、「無料の日記サービス」という形で紹介されています。

(参考:Diarynoteとは?

 

このDiarynote、とにかく機能が少ないのがメリットでありデメリットでもある特徴的なサービスです。

記事の編集やデザインへの制限が多い一方、操作は簡単で動作は軽快。

また、他のユーザーへのリンク機能や、リンクしているユーザーへの限定公開機能等、手軽なコミュニケーション機能が徐々に拡充され人気を博しました。

 

ポケモンカードとDiarynote

まずは歴史の話から。

ちょっと長いので、三角座りしてアメちゃんでも舐めながら読んでください。

 

Diarynoteのつながりのはじまり

Diarynoteがサービスを開始したのは2000年7月15日。

その頃、インターネットの世帯普及率はようやく50%を超えつつありました。

(参考:図録▽パソコンとインターネットの普及率の推移

そして「個人サイト」から「ウェブ日記」へ。

個人メディアの主流が導入ハードルのより低い方へ切り替わっていき、個人メディアを持つ人の数も増えていった時期です。

 

ポケモンカードプレイヤー達の中にも、1990年代後半には既に個人サイトで情報を発信する人たちが少なからずいました。

Diarynoteに関しては、ポケモンカード関連の話題を提供するアカウントが2000年代前半にかけてぽつぽつと現れ始めます。

僕が観測し始めた頃、ポケモンカード関連の話題を提供するDiarynoteのアカウントは20件くらいしかなかったと記憶しています。

 

ブログブームとDiarynoteの時代の到来

そして2000年代前半、ウェブ日記より高機能な「ブログ」が現れ、更にそちらへと個人メディアの主流が移っていきました。

2004年には「ブログ元年」とも呼ばれるブームが到来します。

Diarynoteは2005年に画像のアップロード機能やコメント機能を追加し、ブログ色を強めながらこれに追従します。

 

ブログブームの波は、ポケモンカードコミュニティにも押し寄せました。

Diarynoteの他にも様々なサービスが利用されており、最大勢力はライブドアブログだった印象です。

しかしその中で、やがてDiarynoteだけがポケモンカードプレイヤー達の個人メディア需要をほぼ独占的に獲得していくようになりました。

要因は色々考えられますが、リンクやひみつ日記等のコミュニケーションに特化した独自の機能がプレイヤー同士の交流や情報共有に便利だった、というのは一つの定着のポイントではあったと思います。

ポケモンカード同様、MtG等のコミュニティでもDiarynoteはかなりの市民権を得ていたようで、TCGとDiarynoteの親和性の高さが伺い知れます。

 

DiarynoteとSNSの交わり(パソコン編)

2000年代後半にかけて、ブログブームに続いてSNSブームが訪れます。

日本国内に関しては、2004年リリースのmixiが少しずつ存在感を強めていきました。

その少し後、2008年に日本語版サービスをリリースしたTwitterの存在も重要です。

Diarynoteは、mixiの特徴でもあった「あしあと」機能を2006年に導入し、少しだけSNSブームにちょっかいを出します。

 

これらのオンラインメディアを舞台とするポケモンカードコミュニティの動きは、少々複雑です。

Diarynote視点ですと、まず2000年代後半にかけて徐々に情報流通量が減少していきました。

これに関しては情報の投稿先がDiarynoteからmixiに移行したからだ、という見方が少なからずありましたが、それは要因の一つに過ぎません。

 

2000年代後半にかけては、特にトーナメントプレイヤー達の間で戦略に関する情報を秘匿する流れが強まっていった時期でした。

そのきっかけとなったのが、ヨネダタクヤ選手等日本代表選手が上位を総なめにしたWCS2004。

以降、海外のプレイヤー達は日本のプレイヤーの動向に注目するようになり、WCS2005以降は日本代表選手の活躍が大きく抑え込まれるようになったのです。

それまでも日本のトッププレイヤー達は情報を積極的には公開しない傾向が強かったのですが、WCS2004以降のこういった流れもあり、情報公開に慎重になる雰囲気が広がっていきました。

各地の自主大会で対戦相手のデッキを伏せるようアナウンスされるようになったのもこの頃です。

 

そもそも、2000年代後半はポケモンカード文化そのものが一旦停滞・縮小の傾向を見せていました。

所謂「脅迫状事件」として知られる「バトルロード スプリング★2008」の開催中止の影響はもちろんあるでしょう。

その後も「ポケモンカードゲームLEGEND」シリーズが奮わず、各種イベントが過疎傾向にあったというのも一人のユーザーの肌感覚としてはあります。

 

DiarynoteとSNSの交わり(スマホ編)

2010年近辺から、スマートフォンが人々の生活を大きく変えました。

その端緒となる初代iPhoneの日本発売が2008年。

2010年代後半には、インターネットへアクセスするデバイスとしてのパソコンとスマートフォンの立場が逆転しました。

(参考:ネット利用、スマホがPCを逆転 総務省調査

スマートフォンの普及と時を同じくして、2008年にTwitterが日本語版サービスを開始しました。

一方のDiarynoteでは、携帯端末からの画像アップロードが2008年にようやく実装されます。

 

2008年頃一旦ポケモンカードごと冷え込んだDiarynote界隈でしたが、やがて再び活気づいていきます。

まず、2010年に発売された「ポケモンカードゲームBW」。

ここでのテコ入れは功を奏し、特にジュニア世代のプレイヤー層が大きく増加しました。

それに伴って保護者層のプレイヤーも増加し、Diarynoteへの流入が目立つようになりました。

「〇〇パパ」という名前のプレイヤーが大量発生したのも懐かしいですね。

 

それまで国内のSNSmixi一強でしたが、モバイル環境との相性が良いTwitterが徐々にコミュニケーションツールの主役となっていきます。

mixiは「つぶやき」機能やTwitterとの同時投稿などの機能を相次いで実装しますが、流れに歯止めはかかりませんでした。

一方、mixiから人が流出したことによって、イベントレポート等の個人の活動記録の投稿先としてDiarynoteの需要が復活します。

DiarynoteはTwitterの外部参照先のような形で、一度mixiに奪われるかと思われたその地位を取り戻したのでした。

 

いつしか、イベントで出会った人に「DNやってますか?」と尋ねるのも定番のやり取りに。

Diarynoteが2022年現在のTwitterと同じようなポジションにあったということを想像していただけるのでは。

この2010年代前半辺りが、ポケモンカードコミュニティにとってのDiarynote需要のピークだったように思います。

 

第二次ポケモンカードブームそしてDiarynoteの時代の終わり

2010年も後半に入り、インターネット環境は成熟期を迎えました。

本稿では軽くしか触れませんが、YouTubeTikTok等の動画メディア等のリッチコンテンツ文化も発展していきます。

Diarynoteは、2016年にさりげなくTwitterのシェアボタン機能を追加したり、TCGプレイヤーに気に入られたことを自覚して日記のカテゴリに「ポケモンカードゲーム」等のタイトルを設定する等しました。

 

ポケモンカードは、2018年7月10日のGXスタートデッキ発売以降、第二次ブームに突入します。

大きなきっかけの一つが、有名動画クリエイター(ポケモンカード公式的呼び方)であるはじめしゃちょーの動画でした。

(参考:ポケモンカードにハマってしまいました。助けてください

 

ポケモンカードコミュニティは加速度的に増大し、新たな文化が次々と流入します。

noteの有料記事文化は、Diarynoteに最も影響を与えたものの一つです。

2018年末にチーム桃屋のでんでんさんの投稿をきっかけに、noteが急速に普及していきました。

(参考:徹底解説!レックウザクワガノンデッキ!(有料)

でんでんさんご自身は第二次ポケモンカードブーム前からのプレイヤーですが、有料記事という文化はポケモンカードコミュニティ自体がある程度の規模にまで拡大したからこそ定着したものだと思います。

 

第二次ポケモンカードブーム以降にポケモンカードに触れたプレイヤー達にはDiarynoteに投稿するという習慣はなく、記事レベルのテキストの投稿先としての需要は専らnoteに吸い上げられることとなりました。

 

とは言え、一部の既存のユーザーにはそんなことお構いなしに淡々と使われ続けたDiarynote。

2022年2月18日をもって、惜しまれつつも新規日記作成終了となりました。

かくして、Diarynoteは数多のポケモンカードプレイヤー達のおよそ20年分の活動記録が集積された情報の宝庫となったのです。

お疲れ様でした。

 

結局Diarynoteとは何だったのか

ここまで、Diarynoteとポケモンカードの歴史を振り返ってきました。

改めて、Diarynoteとは何だったのか、という本題に立ち戻っていきたいと思います。

 

繰り返しになりますが、そもそものDiarynoteはウェブ日記サービスでした。

日記とは自分の思考や体験を記録する行為、つまり自分自身とのコミュニケーションです。

その日記をウェブで公開することによって、コミュニケーションは外へ、他者へと向かいます。

そうして、知ってる人から知らない人までが一緒くたになった無限複製交換日記みたいな感じのやつが成立します。

読むこと、書くこと、読まれること、書かれること、それによって生まれるその他のあらゆることの楽しみがここから発生します。

 

かつて、このウェブ日記という楽しみはITリテラシーのハードルを乗り越えた人達の特権的な楽しみでした。

Diarynoteによってこのハードルは限りなく低くなり、このウェブ日記という楽しみに触れられる人が限りなく増えていったのです。

とりわけ、トレーディングカードゲームと相性のいいい機能を備えていたのが本当に大きかった。

多くのポケモンカードプレイヤーにとって、ポケモンカードゲームトレーディングカードゲームの入り口であったように、Diarynoteは個人のオウンドメディアの入り口として重要な役割を果たしました。

原体験の泉と言ってもいい。

 

そんなDiarynoteの役割は、今やその他の多くのオンラインメディアが受け継いでいます。

その中でも、まとまったテキストの投稿先としてのnoteはDiarynoteの代替として大きな存在です。

しかし、noteとDiarynoteには大きな違いがあります。

それは何か。

DiaryかDiaryじゃないかです。

「しょうもない言葉遊びをしやがって」と思われた方、生卵や石を投げるのはちょっと待ってください。

もう一つ違いを挙げてみましょう。

Diarynoteの新規投稿機能は「日記を書く」という名称ですが、noteでのそれは「記事編集」となっています。

「日記」と「記事」の違いです。

こう書くと、生卵や石を投げるのはやめてピンポン玉を投げるくらいにしておいてやろうという気持ちになりませんでしょうか。

もうちょっとお付き合いください。

 

「Diary」、つまり「日記」ですね。

日記は自分自身とのコミュニケーションである、という話をつい先ほどしました。

これに対し、記事は他者に伝えることを原則とするコミュニケーションです。

コミュニケーションのベクトルがどちらに向いているか、これが僕の言う大きな違いです。

この点において、Diarynoteとnoteはその哲学からして似て非なる存在です。

試しに、Diarynoteとnoteの投稿をいくつか読み比べてみてください。

Diarynoteはイベントレポート等個人的なものが、noteは考察記事等の他人を意識したものが多い傾向があるというのを感じていただけるかと思います。

 

Diarynoteからnoteへ、時代は移り変わってゆきました。

その過程で、自分自身とのコミュニケーション、そしてそれを記録するという文化が失われつつあるのではないでしょうか。

というか、実際にそういった投稿そのものが生まれにくくなっているのです。

もうそんなものは必要でなくなったのかもしれません。

あるいは、それは「つぶやき」としてTwitter方面に受け継がれていったという見方もできるでしょう。

しかし、Twitterは140字が一区切りのマイクロブログなのです。

ボリュームが、ボリュームが足りない。

ハンバーガー4個じゃなくてギガマックが欲しい。

 

ともかく、Diarynoteはもう終わるのです。

供給も終わったし、需要も終わりました。

今はTwitterやらnoteやらYoutubeやらの時代です。

でも、もしかしたらそれにもいつか終わりが来るのかもしれません。

その時は、同じような記事を書きたいです。

それまで生きていないと。

がんばります。

よろしくお願いします。

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